今回は、福岡のスタートアップカフェで開催された「商品知識なし、74歳ではじめた壮大な挑戦」というイベントに参加したので、その内容をレビューしていく。
74歳からビジネスを始めるなんてできるの?という興味や、もし74歳からでも始められるなら自分にももっとできるはず!という思いで参加してきた。
登壇社の高尾夫妻は高麗人参の新芽の販売を営んでおられる。
講演会は、これまでの挑戦の歴史や、ビジネスに必要なマインドについての内容で構成された。
また、お二人が営んでおられる日本人にはあまりなじみのない高麗人参の新芽について学ぶこともできた。
高尾夫妻のプロフィール
高尾皓皖(てるきよ)氏・九州ふるさと村代表
・28歳にてこれまで勤務していた印刷会社を退職し、広告代理店を設立
・40歳にて広告代理店が倒産し、数千万円の負債を負う
・56歳までどん底の生活をおくるも外資系の企業と出会い、62歳にて負債を整理。社会復帰を果たす
・69歳の時に高麗人参の新芽に出会い、74歳の時に「九州ふるさと村」を立ち上げ、高麗人参の国産化を計る
・75歳目前で、事業届けを提出し、福岡市内の飲食店へ営業開始
・76歳(現在)にて25店舗(福岡県、長崎県、東京都、京都府)に納品。加工品として忍者醤油、忍者甘酒を開発
高尾真理枝氏
九州ふるさと村でバックオフィス全般のサポートを行う。
無農薬、化学肥料不使用の高麗人参の新芽を健康野菜として九州で栽培し、福岡の特産品にしたいと日々邁進中とのこと。
高尾夫妻のビジネスマインド
失礼ながら正直よぼよぼのおじいさんが来るのではないかと思っていたが、全くそんなことはなかった。
背筋もピンとされ、話し方もしっかりされている方で、とても76歳には見えないほどお元気でびっくりした。
それもそのはず、50年以上に渡って病気をされたことがないとのことだ。
健康の秘訣を聞いてみると、ストレスを溜めないことが一番だとおっしゃっていた。
ストレスを溜めないには?
ではストレスを溜めないにはどうすればいいのだろうか?
高尾皓皖(てるきよ)氏によると特にストレスが溜まらないように好きなことをすることが良いとのことだった。
時には暴飲暴食なんかをすることもあるそうだ(これは意外だった)。
そして、心配事のほとんどは、「心配しても仕方がないこと」だと割り切っているとおっしゃっていたのが印象的だった。
起業に必要なことは?
起業に必要なのは、「やる気」のみとのことだ。
起業に踏み切れない人の多くは、失敗することを考えて行動できないだけで、山も谷もあるから面白いことを体感してほしいとおっしゃっていた。
山も谷もあるが、大きな目的に向かっての自分がどの段階にいるのかがはっきりしていればそれで問題ないとのことだった。
高尾氏の場合は「九州ふるさと村」という、田舎に農業中心の村だけで完結する村を作りたいという大きな目的があり、その道半ばにいるという意識を持っていらっしゃいる。
そのように大きな目的に対して自分が一体どの位置にいるのかがわかれば、どん底の時も平穏な気持ちでいられるとのことだ。
人生の大先輩だからこその含蓄のある言葉だ。
確かに、私は自分は大きな目的がまだまだはっきりしていないために不安な気持ちになるんだなぁとも思った。
また、起業と聞くと、大金やずば抜けたセンスや技術が必要という認識が私にはあったが、そんなものは不要で、むしろ「軍資金0で起業することを勧めます」とおっしゃっていたことには勇気づけれた。
その方がビジネスについての理解は深まるそうだ。
0→1が一番難しい
必要なのは「やる気」のみということだったが、実際にやってみると0→1が一番難しいとおっしゃっていた。
高麗人参にしてもこれまでにされてきたビジネスに関してもだが、初めのたった1つを売ることが最も難しかったそうだ。
そして、1を産み出すことができれば、その後は1ができたことに自信を持って倍々に増やせば良いから0→1よりは簡単とのことだ。
ではその肝となる0を1にする方法とは、1になるまでやり続けるしかないとおっしゃっていた。
アフリカの部族で雨を予知する民族がいるそうだが、雨が降るまで待つため、的中率は100%だそうだ。
「とにかく1になるまでやり続ける。」
自分のビジネスが、いつか1になることを信じこむことが大事だという言葉は、多くの起業家の背中を押してくれると感じた。
メンターを見つける、そして越える
みなさんは「メンター」という言葉をご存知でだろうか?
メンターとは、仕事や人生において指導や助言を与えてくれる人のことを指す。
自分の人生の目的を決めれば、その後はメンターを見つけてそのメンターが言うことをとにかくやってみることが大事だとおっしゃっていた。
メンターを見つけてその人が言うことをまずは全てやってみる。
そして、最後はそのメンターを越えて新しいメンターを見つける。その繰り返しで高尾夫妻はこれまで事業を続けられたそうだ。
多くの人は、自分の目的にあったメンターを見つけられていないともおっしゃっていた。
自分の目的を定めた後は、その目的にあったメンターを見つけ、その言葉通りにすることが近道だそうだ。
高麗人参の新芽を数多くの店舗に納品できるようになった訳
(写真提供:高尾夫妻)
高麗人参の新芽とは
高尾夫妻が、高麗人参に出会ったのが、69歳の時。
高麗人参の新芽は、韓国でも比較的富裕層の間では食べられているそうだが、日本ではほとんどない。
その味に惚れ込み、高麗人参を日本で販売したいと思いたったそうだ。
私たちが食品などで食べる高麗人参は、新芽ではなく、さらに数年成長したものだ。
新芽は少し甘いという特徴があり、葉っぱまで食べられるのも新芽だけだ。
今回は高麗人参の新芽を食べる機会はなかったのだが、1度食べてみたいなぁと思った。
高麗人参の新芽ビジネスの苦労
高尾夫妻が高麗人参の新芽の美味しさに惹かれて、栽培を試みるも、高麗人参の種からの発芽は韓国の農家の企業秘密。
種を譲り分けてもらうこともあったそうだが発芽せず、その後もたくさんの苦労が待っていたそうだ。
●種から発芽しない
●日持ちしない
●納品が取れない
また、軍資金もなく大変苦労されたそうだ。
高麗人参の栽培への苦労は、まずは韓国から買い付けたものを販売することで乗り越えた(お金が早く入ってこないとビジネスは続けられない)。
また、軍資金がないことは、販売元に受注販売後にお金を振り込む形で対応した。
さらに高麗人参が日持ちしない点は、生で即出荷したり、OEM先を見つけて加工品として販売することで対応したそうだ。
納品が取れなかった際には、ダイレクトメールをしたり、体当たりで営業することで受注を取ることに成功したとのことだ。
「本当の意味で自分で考えて動く」ことが、いつか人の心を動かすことに繋がるとおっしゃっていたことも印象的だった。
言葉にすると短いが、たった二人でここまでのことをされたことには驚きだ。
現在も、講演会や展示会などにも積極的に応募し、WEBサイトやSNSなども活用されて全力で営業されている。
感想
講演を聞く前は、一体どれほどの講演なのだろうか?と半信半疑だったが、高尾夫妻の努力と真摯な姿勢に脱帽した。
たったお二人で、しかも商品知識一切なしの段階から、これほどのスピードでビジネスを動かされた様子には驚きだった。
●商品の発見
●仕入れ先の決定
●栽培方法の研究
●マーケティング
●営業
●商品開発(OEM先の調査)
●販売
●講演
など、さまざまなことに次から次へと挑戦されている様子には、私自身も勇気付けられた。
お二人が何度もおっしゃていた「前へ進むしかない」という言葉や、「目的を達成するまでの時間がない」という言葉も印象的だった。
現在、お二人で143歳の高尾夫妻だが、まだまだ前を見て新しいことにも積極的に挑戦されている様子は、情熱的で、とても若々しく映った。
高尾夫妻は現在、高麗人参の新芽および新芽を使った加工商品の販売も営んでおり、講演後には忍者醤油(高麗人参と鷹の爪などを使用して開発した醤油)で漬け込んだ唐揚げと、高麗人参を漬け込んで作ったお酢で味付けしたゴーヤをいただいた。
どちらも美味で、他の参加者とも交流が深められ、とても有意義な講演会になった。
(以下、後日談)
後日、高尾社長より、ご自宅に招かれてより詳しくお話を聞くことができた。
また、高麗人参の新芽をご馳走になり、その淡い味を楽しませていただいた。
高尾社長の目の前のカレンダーは展示会やバイヤーとのミーティング、入荷や出荷の打ち合わせに、講演会など、ほとんど休みなく活動されているようだ。
ご高齢であるが、私よりも何倍もストイックに仕事をされる姿には私自身も背筋が通る思いになった。
・高尾夫妻が運営する九州ふるさと村のWEBサイトは以下のリンクからどうぞ!
高麗人参新芽(高麗忍者)は高麗人参根の新芽約3週間で収穫した葉・茎・根、全て生で食べられる健康野菜です。現在は韓国栽培農…
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