旅行者の憧れの地でもあるペルー。
マチュピチュやナスカの地上絵などの観光地が有名です。
「一度は旅行で行ってみたい!」という人は多いですが、ペルーの移住生活は想像できるでしょうか?
この記事では、大学卒業と同時にペルーへ移住した私が、実際住んで分かった移住の実態をお伝えします。
プロフィール
現在、私はペルーの古都であるクスコに住んでいます。
インカ帝国の首都であったクスコは、現在もマチュピチュ観光の拠点として、多くの観光客が訪れます。
私は移住当初の4年間は日系の旅行会社に勤務していましたが、現在は結婚により退職。
フリーランスで観光客のお手伝いをしたり、通訳・翻訳の仕事をしています。
大学卒業後、なぜいきなりペルーに?
(ペルーの古都クスコ。こんな町に住んでます。)
初めてペルーに来たのは、大学4年生の時。
スペイン語を専攻していた私は、「スペイン語留学」と「ボランティア」を理由に休学し、旅に出ることにしたのです。
行き先は、物価が安いスペイン語圏。「マチュピチュに行きたい」という単純な気持ちでクスコに決めました。
クスコでは、NGOでボランティアをしたり、日本語学校に通う子たちと交流する日々。また、30年以上クスコに在住している日本人の方とも出会い、お母さんのように慕うようになりました。
そしてなんと、その方が経営する旅行会社から、就職のお誘いをいただいたのです!
私は、これを機に大学卒業後はペルーに戻ることを約束し、移住することになったのです。
ペルー移住生活のリアル
こうして、クスコでの新社会人生活が始まりました。
移住前にも5ヶ月ほど滞在していた街ですが、住んで働くというのは、また違った経験でした。人間関係も広がり、ペルー生活のリアルが見えてきました。
ペルーの食生活
(左:子羊と豆の煮込み Seco Norteño 右:牛肉と野菜の醤油炒め Lomo Saltado)
食べることは、ペルー生活の楽しみの一つ。近年、ペルーは美食の国として国際的な注目を集めています。
その秘密は海・山・シャングルの豊富な食材と、ヨーロッパやアジアからの移民がもたらした様々な調理法にあります。
クスコは山岳地帯なので肉料理とジャガイモ、トウモロコシなどをよく食べます。煮込み料理に白いご飯という組み合わせも多く、日本人好みの味付けです。中国移民の影響が強いため、味付けに醤油を使う料理もたくさんあります。
(左のお皿がシーフードの定番トリオ。セビッチェ&シーフードライス&白身魚のフライ)
海までは約700㎞離れたクスコですが、冷凍・輸送技術の進歩のおかげで、シーフードのお店もたくさんあります。私はペルー料理でシーフードが一番好きです。
生魚のマリネ「セビッチェ」は日本でも聞いたことある人多いのではないでしょうか?
クスコ人の特徴
シャイな人が多い
ペルーのクスコ人は、陽気な性格ではなく、意外とシャイな人が多いです。インカの血を引く人が多く、アンデスの山間の町でのんびりとした生活を送っています。
最初はおとなしいですが、仲良くなると人懐っこくて、家族や友だちを大切にします。
そんなクスコ人の性格は、日本人の私にとって付き合いやすく、移住を決心した理由の一つです。
テレビを持っていることがステータス
パーティーもクラブに行くより、誰かの家に集まって、YouTubeをかけながら、仲間内だけで盛り上がることが多いです。
そして、このようなホームパーティーに欠かせないのが、テレビ!
最新の大画面スマートTVを持っていることがペルー人のステータスになっています。お金が貯まったらまずテレビを買う!という人も少なくないようです。
お祭りが多い!
(少し郊外の村に行くと、より伝統的なお祭りを見ることができます。)
クスコでは、2月のカーニバルや6月のインティライミをはじめ、年間数多くの伝統的なお祭りが開催されます。
幼稚園や小中学校では、伝統的なダンスを練習して、お祭りの時期や学校の記念日に、街中で道路を封鎖して踊ります。誰もが小さい頃からリズムに慣れていて、音楽を聞けばすぐに踊ることができます。
ペルーはカトリックの人が多いのですが、インカ時代の宗教観とも混ざりあい、独特の文化を形成しています。
ペルーの物価について
ペルーの観光地以外の物価は安い
旅行でペルーを訪れると、意外とお金がかかります。
それは、観光向けのレストランやサービスは、ペルー庶民の生活からはかけ離れており、高額なためです。
そのため、移住してペルー庶民と同じ生活を送れば、日本に比べてかなり安い物価を体感することができます。
(定食によく付いてるキヌアスープ)
ペルー人のお昼ご飯の定番といえば、ローカルなレストランの日替わり定食。スープとメインがセットになっていて、10ソルくらいでお腹いっぱい食べられます(日本円にして300円程度)。
タクシーが格安
また、クスコの生活で欠かせないのばタクシーです。
バスは人が多く、時刻表もないのであまり便利ではありません。タクシーは交渉制で、6ソル(約200円)もあればほとんど市内全域移動できるので、すぐにタクシーを使ってまいます。
消費税は18%
消費税は18%と高いです。しかし、基本的に税込み料金で表示されているので、意識することはありません。
市場などで買い物をしても、レシートも出ないので、税金を払っているのかどうかも分かりません。
ペルーの住宅事情
一人暮らしは物件探しが大変
移住当初は、部屋探しにとても苦労しました。
というのも、クスコにある一人暮らし用の物件といえば、キッチンもない小さな部屋だけ。トイレやシャワーは共同という、学生寮みたいな場所になってしまいます。
アパートは基本に家族向けで最低でも2LDK。クスコでは、家族は一緒に暮らすのが当たりまえで、一人暮らしの物件は少ないようです。
私は 結局、友人の経営するホステルに2年間も住んでいました。
憧れの高層階暮らしのはずが…
(自宅マンションからの眺め)
マンションの家賃は安い
現在は結婚し、主人と二人で暮らしています。住んでいる3LDKのマンションの相場は、月に3~4万円程度。
私のマンションは9階建ての6階で、 日本に比べてかなり安く、広い家に住むことはできます。
クスコはユネスコに登録されている景観条例のある街ですが、近年、新市街地は現代的な高層マンション(といっても10階くらいが限界)が増えてきているのです。
頻発する水トラブル
(自宅のダイニングキッチン)
ただ、マンションの高層階は水のトラブルが絶えません。
ペルーは水圧が弱く、トイレにペーパーが流せない国。そもそも高層階まで水を上げるシステムが弱いため、断水はよくあります。
クスコでも、おしゃれな見た目の施設や設備が増えてきましたが、基本的なインフラは追いついていないのが現状です。
私のマンションにはエレベーターもついていますが、頻繁に止まってしまいます。日本のように快適なライフラインは期待できないのです。
ペルー移住生活のメリット
自由な生活を選択できる
ペルーに移住するメリットは、自由な時間が多く、自由な生き方ができることです。
会社勤めであっても、年間30日の有給休暇が法律で決められているので、旅行をしたり、日本への一時帰国も可能になります。
会社勤めよりも起業家が多い
クスコに住んでいる外国人移住者の多くは、自らビジネスを立ち上げ、経営者となっています。日本人でも、レストランやホテル、旅行会社の経営者、もしくはフリーランスの観光ガイドがほとんどで、会社勤めという人は稀です。
ペルー人でさえ、会社勤めより、独立や家族経営のビジネスを選ぶ人が多く、気軽に起業しているという印象を受けます。ペルーの最低賃金は月に3万円ほどです。週6日働いても、3~4万円しかもらえない仕事も多いです。物価の安いペルーでも、十分な収入とは言えないので、自分でビジネスを始めようという人が多いのかもしれません。
会社勤めから解放され、自分で新しいことを始めたい!という人には、ペルー移住、特にクスコへの移住はお勧めです。
ペルー移住生活のデメリット
先に挙げた「水が出ない」問題以外のクスコで生活するデメリットをご紹介します。
ペルーは日本から遠い
一番大きなデメリットは、日本から遠いということです。日本とペルーの間には直通便はありませんので、北米都市経由で行き来することになります。気軽に日本へは帰れないというのが、ペルーに住んでいて一番辛いことです。
シッピングモールは少ない
(クスコ唯一のショッピングモール)
また、田舎町のクスコでは、ショッピングやエンタメの施設が少ないと感じます。
ショッピングモールは1つだけありますが、1時間もあれば見て回れるほどの小さな施設です。
入っている映画館も、(ペルー人が文字を読むのが嫌いなため)スペイン語吹き替えばっかりで、映画をオリジナルで楽しみたい私としては、少し残念です。
そのため、楽しみが「食」になってしまうのです。
ペルーに移住するには
まずペルーに入国したら、観光ビザで最大6ヶ月間、滞在することができます。
ペルー在住者となるには、Carné de Extranjería (外国人カード)を取得する必要があるので、観光ビザが有効なうちに手続きを進めるのがおすすめです。
私は2度、外国人カードの申請を行ったことがあります。初めは就職、2回目は結婚したからです。ここからは、どのようにして外国人カードを取得したか、詳しく説明していきます。
外国人カード申請のために
ペルーに滞在する理由を証明する書類の準備必要です。
●ペルー人と結婚している場合:婚姻証明書
フリーランスの人でも、オフィスや店舗を借りている所で契約書を用意してもらい、外国人カードを取得することが可能です。契約書はとても重要なので、信頼できる人としっかり内容を話し合って、外国人カード取得のために協力してもらいましょう。
また、どのような理由で移住するにしても、「無犯罪証明書」は必ず準備しなければなりません。国際警察のオフィスにて、指紋や歯型のチェックを行い、証明書を発行してもらいます。最近、クスコにも国際警察のオフィスができたので、首都リマまで行く必要はなくなりました。
移民局は混むので要注意
地方都市であるクスコにも移民局があり、手続きが可能です。必要書類が揃ったら、インターネットで予約を取り、移民局へ持って行きましょう。
ただ、予約をしていても2~3時間待たされるので、暇つぶしできるものを持っていくことをおすすめします。ここが外国人カード所得のための一番のストレスポイントですが、気長に頑張りましょう。
なお、申請書類が通れば、外国人カードの発行までに1~2ヶ月、また待つことになります。
各種手続きには時間のかかるペルーです。途中で観光ビザが切れてしまったということがないように、早めに準備を始めることをお勧めします。
外国人カードを取得したら
(マチュピチュへ向かう列車。ペルー人と外国人で車両が分かれており、料金が大きく異なる。)
外国人カードを取得すると、ペルー人のIDカードと同様に利用することができます。医療など普段の生活に必要になりますし、ペルー国内の観光地ではペルー人と同じ料金サービスを受けることができるようになります。
ペルー各地の観光地は、外国人とペルー人の間に倍以上の料金差をつけています。外国人カードを取得したら、週末や休暇を利用してペルー国内の旅行も楽しみましょう!
移住費用
私の場合は運良く、就職先が決まっている状態で移住し、移住費用に関しても大きなサポートがありました。
ペルー移住にかかる費用は一概にはお伝えできません。また、お金以外にも、現地でのコネが重要になってくると思います。
就職するにしても、起業するにしても、外国人カードを取得するために協力してくれる人の存在はとても大きいです。
FAQ
クスコに到着した観光客の方は、私を見てよくビックリされます。
「なぜペルーに?!」という方もいれば、「日本語お上手ですね。」と言われることもあります。ただ実は、クスコに住んでいる日本人は、意外と多いのでそんなにびっくりしないでくださいね。
そんな観光客からよく聞かれる質問にお答えします。
危ない目にあったことは?失敗談は?
(クスコ サンペドロ市場の様子)
クスコで怖い経験をしたことはありません。ただ、携帯は2回盗まれました。とても上手な手口で全く気づきませんでした。
首都リマでは武器を持った強盗のニュースも聞きますが、クスコではほとんど聞きません。比較的、治安は良いと思います。
市場など、人通りが多いところでは貴重品に気を付けましょう。それ以外は、特に危ないと感じたことはありません。
移住前に身に着けておいた方が良いことは?
ペルーに移住するためにはスペイン語が必須です。
高いレベルは求められませんが、スペイン語ができる日本人というだけで、興味を持ってもらえます。仕事のためにも、人間関係のためにも、基本的なスペイン語は移住前に身に着けておいた方が良いです。
高山病にならないの?
クスコは標高が3400mあり、短期の旅行者は標高の影響を受けやすいようです。
しかし、移住して生活していると慣れてしまいます。ただ、どこかで体に負担はかかるようで、長年住んでいた年配の移住者が、体調が優れないため日本へ帰るというのをよく聞きます。
クスコに移住するなら若いうちがおすすめです。
最後に
(クスコの中心部 アルマス広場)
いかがだったでしょうか?ペルーでの生活が少し想像できましたか?
インフラ設備が十分でなかったり、娯楽が少なかったり、不便な部分もありますが、自然と近く、自由な暮らしがここにはあります。
ペルー移住を考えられている方のために、少しでも役立つ情報であればと思います。