オールブラックス、自然が豊か、オーストラリアの隣で温かい、などなど。
私たち夫婦は、移住前にニュージーランドについてこのようなイメージしか持っていました。
しかし、移住するとイメージとは違うことの連続だったのです。
そこで今回は、ニュージーランド移住歴6年の私が、NZの移住生活についてリアルな一面をお伝えします。
プロフィール
私がニュージーランド(以降:NZ)に移住したのは2014年6月。
NZへの家族移住を決意するまで、私は10年ほど日本で地方公務員をしていました。
現在は家族4人でニュージーランドのオークランドに住んでいます。
翻訳の仕事をしたり、NZ情報や英語教育について紹介するフリーライターです。
ニュージーランド移住のきっかけ
子供の将来の選択肢を増やしたかった
私たち家族は、当時2歳の娘の将来を考え、NZへの移住を決意しました。
当時は福島の原発事故のニュースも多く、「子供に日本以外の場所でも生きられる力を育てたい」と思うようになったのがきっかけです。
そして、「海外で活躍するには、できれば英語圏で子どもを育てたい」と決意するようになりました。
最初は、留学も視野に入ていましたが、必要な資金や家族で過ごす時間を考え、次第に家族移住に気持ちが傾いていったのです。
消去法でNZに移住することを決めた
それからは海外への移住情報を探す日々が始まりました。
しかし、私たち夫婦は特に英語が話せるわけでも、資金がたくさんあったわけでもありません。
そのため、移住国は「環境がよく、英語圏でビザが取りやすい国」と限定され、消去法でカナダかNZの2択になりました。
当時夫は、NZではぎりぎりワーホリビザを取得できる30歳。消去法でNZに家族移住することに決めたのです。
移住してわかったニュージーランドの特徴
私たち夫婦は旅行でNZに来たこともなかったため、移住してからは驚きの連続でした。
寒く過酷な冬
冬場は天気の変動が激しい
移住前は、NZは温かい気候をイメージしていました。
たしかに夏場は晴天が続きビーチでのんびり過ごせるなど、さわやかな毎日が続きます。
しかし、冬場は最高15度、最低7度ほど。その上、1日に何度も激しい雨と晴れが繰り返されます。
日本では寒い地方の出身だった私にさえ、NZ移住初期はかなり堪えました。
南極大陸は意外と近い
実はNZは、「オーストラリアの隣」とはいえ3000キロほど離れています。その上、南極大陸は想像以上に近く、冷たい風が吹いてくるのです。
しかも、NZの家は造りがあまく、断熱材が入っていない家もあります。
冬場は気温が低い上に湿度も高いので、カビにも気をつけなくてはならないなど大変な時期なのです。
移民が多く多様性がある
オークランドの街中を歩いていると、その多様性に驚かされます。
NZは移民が経済を支えてきた側面があり、世界中からの移民が住んでいるためです。その数、街中ですれ違う人たちだけで、軽く100を超える国籍の人がいると思います。
NZ政府は、「多様性こそがNZの力である」と互いの文化を尊重し合うスローガンを掲げています。そのため、移民にとって暮らしやすい環境なのです。
英語が早い&色々な英語がある
今では大分慣れましたが、移住したての頃はキウイ(NZ人は自分たちのことをこう呼びます)の話す英語の速さに驚かされました。
ネイティブではない方にとっては英語がかなり速く、ついていくのが困難です。
キウイ英語も癖がありますが、他の移民が話す英語も多種多様です。そのため、相手の英語が全く聞き取れない、なんてこともたびたびあります。
ニュージーランドの食事
オークランドでは日本食ばかりでも生活できる
私が住んでいるオークランドは多文化都市。
実は、海外にいるのにまるで日本にいたときと変わらない食事で過ごしています。
2018年の調査ではオークランドの人口の3割近くがアジア系の人たち。街中いたるところにアジア系食材のお店があります。
私は、大手スーパーでは日用品やお菓子など。アジア系食材のお店では、薄切り肉や調味料、麺類を買っています。(薄切り肉はNZのスーパーでは売っていないためです。)
オークランド以外ではアジア食材が手に入らないことも
しかし地方ではアジア食材のお店がたくさんあるわけではありません。
オークランドを離れて田舎の方に行くとアジア人自体が少ないため、移住する場合はその都市の食環境にも注意した方がいいと思います。
ニュージーランドの文化
マオリ文化を尊重する姿勢
NZの空港に到着して初めに目にする挨拶は「hello」ではなくマオリ語の「Kia ora(キア オラ)」です。
この言葉はマオリ語の代表的な挨拶。
NZは、元々マオリ民族が住んでいた土地に入植し、彼らの土地や文化をも奪ってしまったという歴史があります。
その歴史を風化させないために、学校や幼稚園では積極的にマオリ語の授業が取り入れています。
教育現場以外でも、公共交通機関や看板など街中のいたるところでマオリ語の表示が使われ、マオリ属の権利や文化を復興させようとしているのです。
実は国家もマオリ語と英語の2種類あり、マオリ語バージョンの方が先に歌われています。
ニュージーランドの物価
毎年のように物価は上昇している
NZはインフレ国家。時給や賃金は毎年のように上がります(2020年4月現在の最低賃金は18.9ドル)。
賃金が上がるのは一見、良さそうに感じますが、それ以上に物価は上がっています。食品や日用品の値段は毎年のように上がっているのです。
2014年ごろ:4ドル以下
2020年現在:6ドル弱
外食も高額
外食費も日本と比べて高めです。
カフェでコーヒー(4.5ドル~5ドル前後)とマフィン(4~5ドル前後)を頼むだけで、軽く10ドルは超えます。
昼食をレストランで取ると、安い店でも12~15ドル、高い店では20ドルを超えるくらいかかるのが一般的です。
ニュージーランドの税率はシンプル
NZの税金はとてもシンプルです。
生活の中で支払うものは所得税とGSTと呼ばれる消費税です。これに、持ち家がある人は固定資産税・会社を持つ人は法人税がかかります。
NZの所得税は累進課税となっており年間の所得に応じて支払います。
年収 | 所得税率 |
---|---|
1万4,000ドル以下 | 10.5% |
1万4,001~4万8,000ドル以下 | 17.5% |
4万8,001~7万ドル以下 | 30% |
7万1ドル以上 | 33% |
消費税は一律に商品やサービスに対し、15%かかります。税率は決して低くはありませんが、シンプルでわかりやすいと思っています。
ニュージーランドの物件と家賃
ユニットタイプの家
我が家はオークランド市内の外れにある2階建て。
ユニットタイプの家と呼ばれ、2階部分には大家さんが住んでいる日本の二世帯住宅のような作りです。玄関や生活スペースは全く別なので、プライバシーは尊重されています。
オークランドの家賃は高騰している
私たち家族はオークランドの平均よりもかなり安い家賃で住むことができており、2LDKで「週」に水道料込で400ドルの支払い。
月当たり1600ドル~1800ドルの出費です。
これでも市内の平均家賃よりも「かなり安い」ので、オークランドの家賃の高騰ぶりがわかるかと思います。
フラットを入れることが一般的
私の友達の例でいうと、市内中心部からバスで10分程の地域に住んでいますが、3LDKで週に620ドルかかるそうです。
当然これだけの家賃を1家族だけで支払うのは多くの家族にとって大変です。
そのため、こちらではフラット(部屋を貸して同居するスタイル)を入れることが一般的です。
フラットは日本でいうシェアハウスや下宿に近く、一部屋を間借りし、後の設備を供用とするスタイルです。
ニュージーランドの移住生活費
例として我が家の1か月の出費をお伝えします。
表:オークランドでの生活費(大人2人・子ども2人)
食費(雑費も含む):150×4週=600ドル
電気代:180ドル
ネット代:90ドル
携帯代 20ドル×2台:40ドル
ガソリン代 50×4週:200ドル
その他交通費 30×4週:120ドル
合計 2840ドル/月
ここに交際費や被服費、医療費など突然の出費も加わります。
我が家は住居費や食費は他の家族よりもかなり低い方ですので、ご家庭や生活スタイルによってはこれより1000~2000ドル以上高くなると思います。
とにかく、住むこと全般にお金がかかるという印象です。
ニュージーランド移住前に用意した軍資金
軍資金は家族構成とビザに左右される
私の場合は、2014年の日本円で800万ほど軍資金を準備していたと思います。
NZドルに換金して90000ドルくらいです。
レートが良い時だと同じ800万円でも、1200ドルになることもありますので、換金のタイミングを逃さないように気をつけるとよいと思います。
我が家は「子どもが小さかったこと」&「ワーホリビザがあった」のでこの額でなんとなかなりましたが、働く先がなく、何年かは学校に行く前提だともっと多額の費用が必要になると思います。
1年の生活費の目安
ざっくりとですが、我が家の様に「小さな子ども2人×大人2人」の家庭で、生活費だけで年50000ドルは最低ラインかと思います。
ここに車などの大型のものの購入や予備のお金などを合わせますと、一年でも80000ドルくらいは必要です。
ニュージーランドの移住生活のメリット
子供に国際感覚を身に付けさせられる
NZに住む何よりのメリットは、移住の目的であった「子供に国際感覚を身に付けさせられる」環境を用意できたことです。
子供は、英語はもちろん、色々な国の違いや多様性を実感できる環境にいます。
現地の友達を作り、いろんな国の子と関わる我が子の姿を見ると、ここで子育てできる喜びを感じます。
子育て世代への温かい眼差し
また、子どもを育てる親に対すしての温かい眼差しを感じることもNZ移住のメリットの1つです。
NZでは社会全体が「弱い人や困っている人は助けよう・支え合おう」という精神があります。
子どもを育てる親に対しても同様で、「温かく寄り添う」姿勢が社会全体に共有されているように感じます。
親も安心して子育てできる環境があることは、子どもの心身の成長にもよい影響があると考えています。
ニュージーランドの移住生活のデメリット
社会へのストレスはほとんどありませんが、金銭面や生活している上で感じるデメリットは以下の3つ。
●金銭面での出費のストレス
●英語力のストレス
ビザのストレス
これは永住権を取らない限り、ずっと続くと思っています。
ビザを申請するのには毎回お金もかかる上に、政治に左右される不安もあります。
私たちが移住した2014年から、NZはどんどん永住権が取りづらくなってきており、審査も遅々として進まないのが現状です。
毎回ビザの更新時は胃が痛くなるほどストレスを感じています。
金銭面での出費のストレス
NZに住むことは家賃や物価の高さとの闘いでもあります。
生活費がかさむこの国では、日本にいた時と同じ生活の質を保つのは中々難しいです。
外食費は高いので必然的に自炊が多くなりますし、日本にいた時に比べて家や家具、衣服などのクオリティは下がってしまいます。
毎月なんとか家計をやりくりしながら生きているのが我が家の現状です。
英語力のストレス
私は、永住権取得に必要な英語のスコア(IELTS 6.5)をパスしましたが、この国で暮らすのに必要な英語力にはまだまだ足りないというのが現実です。
日本人家庭のため、しばらく英語を使っていないと驚くほど会話が出てこないこともありますし、「日本語ならもっと複雑な思考を説明できるのに…」と落ち込むこともよくあります。
これは、英語力にある程度自信がつくまではずっと続くのだと思っています。
ニュージーランドに移住するにはどんなビザがあるの?
移住するための最も王道な方法は、就労ビザを取って、その後永住権につなげる方法です。
就労ビザの取得方法
働くためのビザは、ワーキングホリデービザとエッセンシャルスキルズワークビザの2つが一般的です。
ワーキングホリデービザ
ワーキングホリデービザは1年限定で滞在でき、30歳の誕生日まで取得できます。
雇用主が決まっていなくてもこのビザでNZに渡航し、期限内でしたら好きな仕事で働くことができます。
エッセンシャルスキルズワークビザ
一方、エッセンシャルスキルズワークビザは、給与によりますが1~3年(高給の場合は最大5年)取れ、年齢制限などはありません。
基本的には企業側からの「この人を雇いたい」というjob offerを元に、移民局に申請するという流れです。
申請料は495ドルは本人のみの金額。家族の申請料や健康診断・翻訳など追加でお金がかかります。
※就労ビザ・永住権はここ数年でも規定が目まぐるしく変わっており、コロナの影響で今後も変わると思われます。NZではビザのアドバイスは資格をもったアドバイザー又は弁護士のみができると法律で定められていますので、必ず専門家の方の意見を聞いてください。
FAQ
NZに住んでいて怖い体験は?
NZは比較的治安が良く、私は今まで身の危険を感じたことはありません。
ただし、軽犯罪(窃盗など)は少なくはなく、夜道の一人歩きや危険な道には近づかないなど、日本よりも気を付けないことは多いです。
日常であからさまな差別を受けたり、犯罪行為に巻き込まれたりといった危険な経験はありません。
渡航前に日本で身につけておいたほうがいいことはある?
英語力は、日本にいる間に磨いておく
普段の生活でも英語は必須。また、永住権を取るときや、大学に行くときにも英語の試験のスコアが必要です。
今は自宅にいてもオンライン英会話など、英語力を磨ける教材は身の回りに溢れています。日本にいる時から英語力を身につけておくことは金銭面でも、時間においても将来の自分を助けることになります。
移住先の仕事を調査する
英語力に既に自信があるという方は、移住先で就業する仕事について調べておくとよいと思います。
理想は、今働いている仕事と移住先での仕事がつながることです。
しかし、今回のコロナウィルス問題により、今後どのような業界で人手が必要とされるかは全く未知数。
移住を考えている人は今後の見通しについて必ずプロに相談し、戦略を立ててから決断するべきです。
おわりに
海外移住となると、「失敗したらどうしよう…」そんな不安がつきものだと思います。
我が家もそうでした。しかし、一歩踏み出したことに後悔は全くありません。
移住に興味がある方はぜひ徹底的にリサーチを重ねてみてくださいね。「失敗したらどうしよう」ではなく、「失敗しないために今何をすべきか」にフォーカスしていくことで、未来は動き始めると思います。
NZ移住に興味を持たれたあなたを応援しています。